海の話

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僕はよく海に行く。

ヨットは風任せだから自然とよく話をしておかないと危険な目に遭う。

自分で作ったヨットだから責任は一切自分にある。

 

長い航海をすると何日も陸に上がらないことがある。

風呂も入れないし、旨いものも無い(何でも旨いが)。

一度セールをセットしてしまうと何もやることがなくて退屈になる。

起きてから寝るまで食って飲むだけ。

運動不足でデッキ上を歩き回ったり、天気図を取ったり、位置を調べたりしても間が持たない。

 

退屈で退屈で仕方ない数日後のこと・・・・。

暗くて妖艶な夜が白み始め、太陽が昇るまでの意外なほど長い変化の後で、ふっと昇ってしまうとその後の変化は早く、昼になる。

鳥が舞う。雲が流れる。スコールが通る。イルカに逢う。

そして、夜の方が饒舌で、星、夜光虫、トビウオ、月光による虹、灯台や本船の光などが幻想的な中で乱舞する。

昼と夜の、理性と幻妖の波がこんなにも大きく、谷の一番深いところでは波頭の理性は別世界のように遠いのに、半日経てば確実に来るというのは不思議なほどだ。

慌ただしい日常の感覚の時には気がつかなかったものが、退屈を通り過ぎた非日常の感覚の中で、美しい時空が感慨と共に全身に染込んでくる。

 

一日ってこんなに美しいのか・・・。