RC造外断熱によるローコストの100%パッシブ住宅

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建築技術 No.633
RC造外断熱によるローコストの100%パッシブ住宅
パッシブだけで快適な空間を作り出すのは困難である。都市においてはまず無理だ。陽も当たらない、通風もないでは話にならない。日当たりがなければ冬における温熱がない。通風がなければ夏における冷熱がない。それ以外の使えそうな熱源を探すと、気化熱、地熱がある。しかしなにがしかの設備が必要になる。地熱である井戸水を使おうにもポンプがいる。どこまでがパッシブなのかがまだ明確にされていないが、ポンプで汲み上げて、温熱又は冷熱の井戸水を家の中をぐるぐる回すのは、どう見たってアクティブになるだろう。しかしそれはパッシブだ、と思う。だいたいパッシブだろうがアクティブだろうが本質を左右するものではない。言葉が煩わしい。どっちだっていい。「私のパッシブ」は自分で作れたり、自分で直せる範囲の物だ。ポンプを使うことぐらいは自分でできる。だからパッシブ。もう少し自分から離して言えば、ローテクならパッシブ、ハイテクはアクティブとなる。またはセルフビルドができればパッシブ、専門家でないとできない物がアクティブと言ってもいい。だから屋根に黒塗りのビニール袋を載せて温水を作り、塩ビの配管で風呂に落とすようにしたものはアクティブだがパッシブ。要するに身近で、何かあっても自分で直せて、費用のかからない物がパッシブなのである。この分類は精神面、行動面でのもののようだ。外部に対してパッシブ、ということだ。内部(自分)に対してはかなりハードだが楽しい、とも言える。パッシブが成立する為の第一条件は、家が蓄熱型であること。その点木造は難しい。(無理ではない)少しでも蓄熱量を増やす為の工夫を重ねなければならない。パッシブで利用出来る熱量はほんの少ししかない。その中でも一番心強い熱はなんといっても冬場の太陽熱だ。陽が出ているうちになるべくエネルギーを取り込んでおく。外気が寒くなっても熱が逃げていかないように、強力な断熱が欲しい。蓄えた熱量なんてたぶんほんの少しだ。それを大切にしなければならないから、断熱はかなり重要だ。冬の太陽熱に比べ頼り無いのが夏の冷熱だ。夜の外気温を室内に蓄熱するのだが、それこそほんのちょっとの熱量だ。そんなもの、太陽が昇ってちょっとでも太陽光が窓から入り込めばすぐ御破算になってしまう。太陽光とは命がけの防御が必要だ。それとハロゲン球。パッシブの大敵だ。しかし蓄熱量が多ければ少しはましだ。冬の太陽熱は土間に蓄熱するのが簡単。しかし一般的な家の構造は木造である。床下があり木組みで床が構成されている。土間は作りにくいが、愛しいパッシブのために、どれだけ効果があるのか分からないけどゼロではない、と人生訓めいて、なんとか知恵を絞って実現する。しかし板張りの部屋なのに窓際だけが土間(タイル)というのはおかしいと思わないか。

私は木造であっても床下の木組みは全くなくしている。平らな基礎を作りタイルをはって仕上げる。もちろん外断熱で、一応地熱も利用しているつもりだ。タイル下には温水パイプを埋設して床暖房をする。そのように作ると床下の心配を一切しなくてすみ、かつメンテナンスが楽である。耐久性のためのメンテナンスからは一切解放される。

よく思うことだが、湿気の多い日本で木造の家を作ることは、蟻の国で砂糖の家を作るようなものだ。耐久性を20~30年ぐらいと見ているなら問題ないが、長寿命を視野に入れた時、木造は恐い。蓄熱量もあまりないし。

私が面白いと思うのは、RC造の外断熱である。この蓄熱量はすごい。

RC造がなかなか一般的な工法にならないのは、まずその辺の大工さんでは出来ないからだが、それよりもコストが高いことだろう。さらにRC造は評判が悪い。かっこはいいけど寒い。築1、2年は湿気で悩まされる、ひび割れる、等々。専門の立場からもRCの打放しは良くない、健康な人でも病気になる、と思うから、RCでという人がいたらやめなさいと助言した。

しかし、RCを外断熱で作ると、話が天と地ほどに違ってくる。コンクリートが外側を断熱材で囲われるから、コンクリートの持つ熱容量がすべて室内側になる。膨大な蓄熱量を持った空間があらわれる。その熱環境は最大限に人に優しいものになる。作り様によってはこれ以上に日本の風土に適合したものはないのではないだろうか、と思えるほどだ。水による弱点もないし、地震にも強い。シロアリの心配もまずしなくてすむ。

そこで、もし、外断熱のRC造が、、もし、木造と同じ値段でできたら、読者だったらどうしますか。

日本の建築が変わる気がします。それを実現する為に、URCを開発しているところです。

そして今設計中のものがとても自然条件の良いところで、100%パッシブだけで快適になるようにと計画しています。夏に余分な熱は入れない。冬はなるべく熱を逃がさず、入れる。とやっていくと何ともつまらない形になってしまい、建築家生命を問われそうだ。

そこまでして、こんなに条件のいい所で、もしパッシブに失敗したら、ソーラー見ろ!