当該敷地付近は、窪地であるために大雨の時の浸水深さが2メートルになる、とハザードマップにあった。当初の計画は木造だったが鉄骨3階建として1階をピロティにして貸し駐車場にした。駐車場の幅を確保するために1階柱をずらした。建設費アップをその収益で補った。

太陽の光と輻射熱は、住宅にとって非常に重要な要素であると考えているので、間取りは、太陽との最適な関係を探ることで決まっていった。外観は、道路斜線のままでは恰好が悪いので天空率を駆使したが、それでも斜線が外形を決めたと言える。この住宅は、変な作為もなく無理もなく様々な条件を素直に納めるようにして自然に出来上がった。その無理のない家のあり方がクライアントの仕事の理念と呼応してノンブローハウスと名付けた。クライアントは、ブローをかけなくてもサロンの仕上がりが家で再現できるノンブローカットを開発した美容師で、その自然で理にかなった無理のない概念が家と呼応した。

ローコストを極めなければならなかった。イニシャルコストだけではないと考えているので、ランニングコスト、メンテナンスコストを含めたライフタイムコストを重視した。2階外壁はUWallと名付けているが、砂利等の無機物だけで構成しているためフリーメンテである。また経年変化でコケが生えるのを狙っている。そのため屋根に降った雨はこの砂利層に落とすようにした。砂利層は夏の太陽の輻射熱をカットするにも有効である。3階外壁は、硬質木片セメント板を使用して目地をノンシールで納め、仕上げ塗料はガラス系を選んだ。この外壁もフリーメンテであることを願っている。外観は、サッシ枠を消す納まりとした。

高断熱にし床暖房を取り入れた。床はコンクリート一発仕上げである。蓄熱型の家である。その熱容量を利用して通年快適な熱環境を実現している。冬は床暖を弱でつけっぱなしにしているがエアコンは使用せずに済んでいる。夏もエアコンをつける日は少ない。

1階にURCと名付けたネットを利用したコンクリート打ち放しの壁がある。ネットから余剰水が滲み出るため高品質なコンクリートとなる。表面には気泡が全くなく硝子質が形成されるために中性化を防げる。
内壁材は無く、外壁の支持体に使用したSPF材が現しとなっている。天井も無い。デッキ現しなので電気等の設備が露出になるが、綺麗に見せるために、また設備の増設移設を容易にするためにグレーチングを使って納めた。

竣工年 :2017年

所在地 :東京都渋谷区

主要用途:専用住宅

構造設計:構造設計アソシエイツ 担当/大沼耕平

施工  :小川共立建設 担当/合田邦雄

規模  :地上3階建
・・・・・敷地面積 147.80 ㎡
・・・・・建築面積 103.38 ㎡
・・・・・延べ面積 199.57 ㎡

掲載雑誌:新建築 住宅特集2018年 8月号
・・・・・モダンリビング   2018年11月号

     TV      :  テレビ朝日 建物探訪 2019年6月8日朝4時30分〜

 

 

[ クライアントのコメント ]

素材をありのままに使うという事。
僕のオーダーに対して、
海野さんの素材に対する解釈は物だけではなく光や方角、土地の形や音、
目に見える物体だけではない事を住む程に実感し気づかされる。
それは熱環境においてもそうで、海野さんの言う蓄熱と言うのは住宅展示場などでよく聞く断熱効果とは比べ物にならない領域を住むことで実感した。
作ってる時は海野さんの言ってる事が素人の僕には理解しがたい事もあったが、
この家に住むことで、いかに今までの常識が多数決による不確かな安心感だったという事に気づかされた。
見た目めも大事だが、それ以上に「感じる」というのは生活する上で最も快適さと直結する事だと実感してます。
装飾的に足すのではなく、容易に引くのでもなく、余計な事をしない。
実はそれが1番難しく、それこそが海野デザインだと住むほどに感じれる家が出来たと感謝してます。
(2018年9月)