プランはごくシンプルにし、全室において日当たりと風通しを良好にした。ガラス面が多くなったが断熱性を高め床暖房も入れた。床は天然石であり、割肌面を表面にした。床材を石にすることは当初から決めていたことだが、どんな石を使うかは決めていなかった。設計がある程度煮詰まってから地元の石材店巡りが始まった。何件めかの石材店が山を案内してくれた。その山から石を切り出しているという。切り出した石や加工した石など様々な石がゴロゴロしていた。その中に厚さが10センチ弱の畳より大きい石板があり、その表面が割肌状になっていた。普通の割肌とも違い、波が大きく独特の趣があった。その割肌風はどのように加工したものかを聞くと、それは全く自然の作り出したものだという。たまにそのような石が出るとのことであった。天然の割肌だったのだ。製品にするにはまず端部を薄く切り落とす。その時に出た端材だった。この板は、やがては細かな砕石になる運命だという。この石を使おう、瞬時に決定した。

ひとつ問題があった。このような石は頻繁に出るものではない。床全面に使う分が集まるには1年かかる。しかしこの石が使えるのであれば1年ぐらい待つ甲斐がある。クライアントと気持ちは一致した。とは言ってもクライアントはしばらく躊躇していた。何を置くにもガタガタするし掃除もしにくいのではないかと。

これほど大きな石となると施工は人力だけでは無理だ。クレーンを使うしかない。そのためには屋根だけでなく壁もない状態の時に、まずは石を敷くしかない。床を先に仕上げる工程となった。

その後、コンクリートの片持ち壁を作り、木造の屋根を架構した。垂木はコンクリートに埋め込んでいる。
湾曲したコンクリート壁は、当社開発のURC工法によるものである。
洗面台も浴槽も、何もかも石で作ろうという雰囲気になってきた。地元の素材で作ることの力強さを感じた。石材店の協力があってのことだが、それは普遍的な建築の原点であろう。

椅子等のガタつきは全く問題なかった。

竣工年  :2012年

所在地  :福岡県糸島市

主要用途 :専用住宅

施工   :クライアントによる直営

規模   :敷地面積  1456.27 ㎡
・・・・・ 建築面積    187.53 ㎡
・・・・・ 延べ面積    161.58 ㎡

掲載雑誌 :新建築 住宅特集 2014年3月号

受賞   :2016年 日本建築仕上学会 学会賞

 

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